中津川市の一番北に在する加子母地区。
そこには明治27年に建てられた”かしも明治座” という芝居小屋があります。県指定有形民俗文化財に指定されている木造建築。屋根は平成27年の大改修の際に瓦屋根から創建当時のサワラの榑葺き(くれぶき)石置き屋根に復元されました。

こんな風に紹介すると堅苦しい感じになりますが、平たく言ってしまうと村の公民館のようなところです。
修理されながら、今も現役で使い続けられている愛すべき芝居小屋。それが かしも明治座 なんです。
今回は、かしも明治座で何にもイベントがない時に訪れると体験できる見学コースをリポートします。

年に1回の地歌舞伎公演、本格的なクラシックコンサートが聞ける田中千香士音楽祭は代表的なイベントです。

その他にも中村屋の歌舞伎公演、マジックショー、フラメンコ公演に始まり、地元のカラオケ大会、PTA行事などなど使い方は自由自在。

わが家の娘たちも小さい頃から地歌舞伎に参加して通ってきた居心地のいい空間です。

かしも明治座を紹介するには明治27年から続く歴史や戦時中の苦難の時代、平成の大改修のことを省くわけにはいかないんです。

ですが、今回はそんな凄い歴史ではなくて開店休業中のようなのんびりした普段のかしも明治座見学コースをご紹介したいので歴史についてはカット!

ぜひ、かしも明治座に置いてあるパンフレットやHPで見てみてくださいね。

かしも明治座は、開館日には見学することができます。(個人は入館料無料・有料ガイドツアー有、団体は入館料・ガイド料として1人300円)
開館している時には管理人さんが見学ツアーをしてくれます。

受付があるわけじゃないので、訪れた方は恐る恐る入ってくる…
「入館してもいいのかな?無料なのかな?靴は脱ぐんだよね…?」
そんな感じで所在なさげにしていると、気配を感じてどこからともなく管理人さんが現れます。
見学の詳しい説明はかしも明治座ホームページに載っています。

中に入ると大空間が広がります。

創建当時に作られた娘引き幕。

明治の人ってオシャレ!と感じるデザインです。色鮮やかさも目を引きます。
山奥にある小さな村だったはずの加子母村。当時の文化レベルの高さが伺えます。
この娘引幕に書いてある屋号は、現在でも「○○屋の横の畑でよー」「〇〇屋の者やけど、来週の注文頼むわ。」なんて感じで普通に使われています。

加子母の子どもたちのイベントだと、「アレはあんたのひいひいばあちゃんやよ」と言われて本人が「へー」って言ったりします。
20年前に加子母に移住してきた私にとって、かしも明治座の創建当時の人達が現在と直接繋がっていることに驚いたことを覚えています。

舞台の幕の上げ下げや演出装置も年代物!全て人力です。
舞台転換に使う幕の「切り落とし」の実演をしてもらいました。
思わず「おおーーー!!」と歓声が上がりました。

おめでたい出しもので使う松の幕は中村屋から寄贈されたもの。
何を隠そう かしも明治座の名誉館主は二代目 中村七之助さんなのです。

舞台裏に回って小道具部屋。暗い時にみたら、ちょっと怖いようなものも・・・。

化粧部屋あたりでは昔の旅役者や有名人たちの落としがき(サイン)も見ることができます。
(※現在は一般の方は書くことはできません。)

そしてお待ちかねの奈落への道!やっぱりドキドキしますね。
たった数名で舞台の廻り舞台(直径5.5m)を回せるようになっています。

奈落から戻ってくるとホッとしたのも束の間、あり得ないほどの急階段を昇って二階席へ。
二階席からも舞台がよく見えます。

思わぬ来館者への配慮をお願いする張り紙発見!何しろ空けっぱなしで隙間だらけの木造建築ですからね。

二階席から外を眺めてみると来館前に見たのと同じ風景。スリルと歴史体験で癒された後は先ほどまでとはちょと違う風に見えるかもしれません。

最後に管理人さんからクレ板募金のお話を聞きます。
大きな屋根を持つかしも明治座。この屋根は以前はセメント瓦屋根でした。
それを平成の大改修時に明治の創建時代と同じクレ板葺の屋根に復元されたのです。

必要となったクレ板はなんと85,000枚!飛騨の職人さんからクレ板の作り方を習って、加子母の人たちがクリとサワラの木から一枚一枚作り出したものが使われました。

現在使われているクレ板。木材ですから当然傷んでいきます。
そこで次の屋根改修のために来館した方にクレ板募金(1枚500円)への協力をお願いしています。

著名人の書いたクレ板を見本にして名前やコメントを書きます。
20年後の屋根替え時には一緒に屋根に使われることになります。

クレ板募金の脇には娘引幕をデザインした手拭いも販売されてます。
実は…この手拭いはとても使いやすいんです。見つけたら手に入れることをオススメします。


※現在販売しているものと色味が違う場合がございます。

時代を超えて現役バリバリのかしも明治座。
地元の子どもたちに聞いても加子母の自慢ベスト3には入る場所です。
明治から今日まで村人たちに大切に使われているかしも明治座を、ぜひ訪れてみてください。


取材・文 地元ライター えびカニ
加子母に夫婦で移住して20年。娘2人は加子母っ子として成長中。
土地にあった露地野菜を作る農家です。
たなか野菜畑