「アトリエ玉手箱」は古楽器奏者ハルさんこと渡辺敏晴さんと、画家であり、イラストレーターであり、絵本作家である本間希代子さんの二人が11年前に立上げました。
名古屋出身の本間さんは、25年前に「森の交流大使」という岐阜県の事業で加子母に来ました。任期が終わった後も加子母に住み、ずっと絵を描いています。
今回、付知(つけち)のギャラリーで作品展をされるということなので、さっそく行ってきました。
加子母は南北に国道256号線が走ります。
その南端にある賽の神峠(さいのかみとうげ)のトンネルを抜けると、となり町付知町。
その南端にある賽の神峠(さいのかみとうげ)のトンネルを抜けると、となり町付知町。
今、そこにある「熊谷榧つけちギャラリー」で本間希代子展が開催されています。
本間さんの描く絵は、静かで暖かく、透き通った空気が流れているようで、観る人が、いつしか自分と向き合っている事に気付きドキッとするような、そんな絵だと私は思います。
どうしてそんな絵が生まれてくるのか、どんな想いを込めて絵を描くのか、本間さんに聞きました。
幼少期の本間さん
- いつ頃から絵を描いていたんですか?
- 物心ついた時から描いてました。
伯母さん(本間美智子)の絵画教室に行ってました。二歳か三歳の時、東山動物園のキリンを描いて賞を頂いた事を覚えています。小さかったので、四つ切の紙の上に乗っかった状態で描いてましたね。
- すごいですね。そんな年から描いていて、賞まで。
- 小さい時から絵を観るという事が習慣にありまして…昔の愛知県美術館知ってます?
よく伯母さんに連れて行ってもらった。変わった建物で、1階に喫茶コーナーがあって、背の高い椅子に座って、カウンターでクリームソーダを飲むのが楽しみでした。有名な人や海外の凄い人の展覧会もよく観に行きました。 - そんな時の記憶とかありますか?
- ぐるっと一通り観て、気になる絵の前に戻って、その絵をずーっと観るの。その絵と対話しながら、その絵の中に入り込んじゃうという観方をしてました。
熊谷榧つけちギャラリーで開催している「音楽と物語のある絵」
- 今回のつけちギャラリーに展示してある「ある夜の出来事」というシリーズは、一枚が畳一畳の大きい絵で、それも4枚の連作ですが、どんな想いで?
- さっきお話したように、私の絵にも観る人が入ってきてほしいし、対話してほしいと思うんです。
- あ~、本間さんが美術館で、気になる絵に入り込んでしまうようにですか?
- そう。そこまででなくても、心にとっかかりのある絵を描きたかったんです。できたら、可愛い~とかで終わってしまわずに。そこは私の力量不足もあるんですけど。
- この4枚の絵には、かなり大勢の人が描かれてますが。
- はい、130人位描かれてます。その人達と会話しながら描いてます。たとえば、何色の服着てるの?とか、何考えているの?とか。
今回の4枚は日暮れから夜になり、そして夜明けが来るという一連の作品です。会話しながら、場所の温度や湿度を感じながら進めていきます。 - 音楽が流れてますね。
- 全ての絵に楽器が描いてあります。音楽が感じてもらえて嬉しいです。1枚目は「饗宴」というサブタイトルが付いてます。喧騒、賑やかな雰囲気を感んじられたと感想言われる方もいました。
- でも、静かな空気感も感じました。
- 「束の間の休憩」は特に静かな絵ですね。きっと、私の心が静かな所へ行きたいのだと思う。描いていると、普段のごちゃごちゃした暮らしから離れられるので落ち着くし、精神衛生上いいんです。
でも、今回あれだけの大きい絵を集中して描くと、あっちの世界から抜けだしてくる事がとても困難でした。久しぶりに、日常に戻り難いほど、ガッと入り込んで、楽しい時間でした。
絵と絵本
- 本間さんは絵本も描いてると聞いてますが。
- 絵本はなんとかものにしたいです。四日市にある、子どもの本屋メリーゴーランドの絵本塾で勉強しています。
塾に入る為に作品の審査があって、入ると月一回作品を送り講評してもらうんです。結構厳しいところでね「この作品の何所が面白いの?」「絵本にする意味あるの?」などなど、ズバリ言われます。 - 絵と絵本を両方やるんですか?
- そう、両方やりたいと思ってる。絵本は芸術作品でもあるんですが、メディアの一つ、出版となると、売れなければいけないので、買う側を見てるし、子どもに伝えるという事も考えるし。
いまさら思うことは、絵本は影響力が大きい。小さいとき読んだ絵本が、子どもの価値観に影響すると思うの。だから、客観的な目が必要なんですね。 - 絵本って、ストーリーも必要ですね?
- そうなんです!だから難しいなーと。それに、絵本の絵ってすごいな~って思うんです。なんとなく描いてないんです。それが、長新太のような絵でも。
- 長新太?絵本作家ですか?
- 巨匠なんです。「どろにんげん」「ゴムあたまポンたろう」とか。誰でも描けると思われがちじゃないですか。でも描けないんですよー。絵と絵本は別物。挑戦してて面白い。
- 別物を同時に追求していくという事は?
- 絵本やイラストは客観的に。作品としての絵は、個人的なものを突き詰めていく。両方あってバランスが取れる気がします。
絵を描く時はごちゃごちゃ考えないで、イメージをどこまで捉えられるかに集中していれば良いと思うんです。個人的な感情の奥の純度の高い感覚が絵に出せたら、観た人に繋がるじゃないかと思ってやってるんです。
- すごく深い話ですね。
- そうですね~(笑)。
- ありがとうございました。本間さんの絵と絵本の世界が広く深くひろがっていくのを楽しみにしています。
カシモールの「アトリエ玉手箱」では、本間さんの描いたイラスト入りの可愛い一筆箋、ポストカード、便箋などを置いてあります。
「かしも明治座」では、絵本の取扱をしています。ぜひみてみてください。
「かしも明治座」では、絵本の取扱をしています。ぜひみてみてください。
緊急事態宣言のため休館になっていましたが、10月31日までの期間延長が決まりました!宣言が解除されたら、ギャラリー再開予定です。
小さな額絵の入れ替えも数点あります。どうぞご来館ください!