大きな粒 グランプリ米「いのちの壱」
生産者 安江政和さん、寿江さん

加子母の直売所やスーパーに行くと「いのちの壱」という名前のちょっと珍しいお米が置いてあります。
北海道の蘭越町で毎年行われる米-1グランプリで第6回大会(2016年)でグランプリ受賞というすごいお米です。
「いのちの壱」は通常のコシヒカリと比べて約1,5倍の粒の大きさでツヤと甘味が特徴です。冷めても美味しいのでオニギリにしても最高なんです。
このグランプリ米を栽培している安江政和さん・寿江さん夫妻に米づくりの日々について聞いてきました。

「いのちの壱」を育て始めたきっかけは何ですか。

  • 加子母の隣地区の竹原で米を作っている農機具屋さんに薦められたのが始まり。他の人と違うお米を作ってみるのもいいかなと作りはじめて15年以上経ったかな。
    代々農家なので、それ以前からも米を作っていました。
    現在はいのちの壱がほとんどだけど、ミルキークイーン、コシヒカリ、餅米も栽培しています。

米作りは3月にスタート

  • 稲の苗は購入する人が多いと思いますが、ご自分で種籾(たねもみ)を播くところから苗を育ててますよね。苗から米作りをされてる方は、この辺りではあまり見かけないんですけど大変じゃないですか。
  • 大変ってこともないけど、種になる籾(もみ)をお湯で消毒する温湯消毒を始めるのが3月終わり頃かな。
    その後、1ヶ月ほど水に浸して、4月20日頃に1ミリぐらい発芽したものを育苗箱に籾まき(土に籾を播く作業)をします。
    籾まき機という機械を使ってやるんだけど、機械に土を入れたり育苗箱を入れたりと人数が必要な作業。
    離れて住んでる息子たち家族も集まってワイワイと賑やかにやるね。
  • 賑やかにその年の米作りが始まったって感じですね。
  • 土から芽が出たら苗代(苗を育てる田んぼ)に移していきます。
    苗代に苗がある頃はまだ寒いから管理に気を使うよね。それから5月末ごろに2週間ほどかけて田植え。
  • 最近は田んぼの準備も田植えも稲刈りも息子たちがほとんどやってくれるから助かる。私たちは苗を運ぶだけ。ふふふ。

  • どのぐらいの面積を作ってるんですか?
  • 2町歩(約2ヘクタール)ぐらい。それを2週間で田植えをします。
  • うわー。それは大変なスケジュールですね。稲刈りまではどんな仕事があるんですか。
  • 水の管理と防除(病害虫などの予防と駆除)と草刈り。
    草刈りは田んぼを順番に刈って回って一周したら、また元どおりぐらいに草が生えてる。だから夏の間はずっと草刈りしてる気がする。
  • 加子母はボタ(田の周囲の部分)が斜面で面積も大きいから、草刈りが大変ですよね。
    稲刈りはいつごろですか?
  • 稲刈りは9月中旬ごろから。コシヒカリとミルクークイーンから順番に始めて、いのちの壱を刈っていくというスケジュール。
    稲刈りまでに稲が倒れないかどうかが本当に気を揉むよね。稲が倒れると稲刈り作業が大変になるし、出来にも影響してしまうから。

鴨が泳ぐ田んぼ

  • 最近気づいたんですけど、安江さんの田んぼに鴨がツガイでいますよね。
  • ウチは田植えをしてから7月頃まで水を深く張ります。だから泳ぎやすいのかな。
    川から鴨が飛んで来てるのを見つけると「ウチのカモが来たよー」なんて話したりするよ。
  • 水を抜かないのは雑草対策が主な理由やね。それと秋に倒れない太い茎の稲を育てられるようにとのことでやってるけれどなかなかうまくいきませんよ。
  • なるほど。鴨がいるってこともやはり米づくりの深い話と関係しているんですね。

栽培面積が増えていく

  • 最近、田んぼの面積を増やしてますよね。
  • やっぱり高齢になったり色んな理由で田んぼを作れなくなった人に作ってくれって頼まれると、いいよって感じで引き受けて増えてる。今は1/3が自分ところの田んぼで2/3が他の人の田んぼを借りてます。草刈りとか水の管理があるから、それが大変なところ。
  • 加子母みたいな中山間地は田んぼの一枚一枚が小さいから手間が多いですよね。
  • そう。水を入れる手間や草を刈る面積も多くなってしまう。田んぼが分散していて見回りにも時間がかかるしね。
    その代わりといえるか分からないけど、水には困ることは少ないけど。

炊き方のコツ

  • いのちの壱は、通常のコシヒカリに比べてかなり大きいですよね。粒が大きいことで炊き方に違いはあるんでしょうか。
  • それはねぇ。コンテストに出すときに2人で何度も何度も試したんだけど。
    美味しく炊く方法に行き着いたのがお米3合に水540mlで浸水は20分。炊いた後は蒸らし15分。
    コンテストで炊いてもらう時にも、この方法を提出したの。
  • 少し水が少なめなんですね。浸水時間も短いほうがよいのはびっくりです。
    私も食べたことがあるんですが、やっぱりモッチリとしていて甘味があるように感じました。せっかくなので、教えてもらったやり方で炊いて食べてみようと思います。

米づくりで全国に友達が増えたみたい

  • 北海道の蘭越町で開催される「米-1グランプリinらんこし」と山形の庄内町で開催される「あなたが選ぶ日本一おいしい米コンテストin庄内町」に行くのが楽しみです。参加費は自費なので旅行がてら行きます。
  • 8月ごろにエントリーします。お米を収穫したら規定の量と炊き方を書いて送ります。
    予選を勝ち抜かないと現地で行われる本戦には参加できない。本選は、収穫後に予選を行ってからとなるから11月下旬ごろにあります。あんまり遅くなると雪が心配だしね。
    田んぼの作業が全て済んで、完全な農閑期だから気兼ねなく遠出できます。だから予選の結果が出るのが楽しみであり、緊張もあり・・・。
  • いのちの壱みたいに粒が大きい品種って他にあるんですか?
  • あんまりないなぁ。だから米粒の大きさで品種が分かっちゃうね。
    コンテストに行くと色んなお米を食べることができるから面白い。同じ品種でも生産者ごとに味も違うし、年ごとに出来が違うからね。それに審査員も毎年替わるし。
  • グランプリを受賞したときはラッキーだったと思うよ。
    審査員の人たちは一日中ずっとお米を食べるの。だから日本一苛酷な審査だと言われてるみたい。
    昨年も米-1グランプリの決勝大会に出場することができました。前回の時はまだ勤めていたから飛行機で行ったけど、今回はゆっくりとした日程で自家用車で行きました。途中で青森に寄ったり函館に寄ったりと。
  • コンテストに出る中で、仲良くなった人もいます。
    審査員で来られてた「南極料理人」の作家さんとひょんな流れで翌日ご一緒に北海道の農場を見にいかせてもらったりした。
    見せてもらった田んぼは1枚が1.2町歩ちょっと。とっても大きいので驚きでした。この辺じゃ考えられない。
  • 田んぼが大きいのよ。きれいな長方形で。加子母にこんな田んぼが1~2枚あればいいなぁって思った。
    以前にコンテストで出会った北海道の方は親子3人で80町歩(80ヘクタール)作ってるって言ってた。すごい世界やって。
  • その子に昨年のコンテストで再度会ったら、「嫁さん決まりました。」って言ってたから嬉しかった。
    顔馴染みが増えて、全国に友達がいるみたいな気がする。米づくりの楽しみは、それか。
  • そうやね。また、いつコンテストに行けるかも分からんけど、年に1回会えるといいなぁって感じ。
    稲刈りの時期も、大会に行けるといいねーって話したりします。
  • それはモチベーションになりますね!
  • 1年間のご褒美じゃないけど、頑張ろうかなって思える。

加子母で米作りするということ

  • 加子母育ちだから実感はないんだけど、水は米の味に影響していると思いますよ。加子母が最上流で水源だし、水は豊富にあります。
    田んぼに水を入れるパイプにアカハライモリが住んでたりする。水がきれいな証拠なんだろうね。
  • 加子母はいいよね。なんといっても風が気持ちがいい。
ご夫婦で協力しながら米づくりを楽しんでいる雰囲気が伝わってくるお話しでした。
今年の米づくりが良い出来でありますように。